「櫓(やぐら)太鼓(だいこ)がきこえる」 鈴村ふみ

 

今回は、この春の2022年度高校入試に出題された小説、「櫓(やぐら)太鼓(だいこ)がきこえる」著者:鈴村ふみ を紹介したいと思います。

この作品は、角界の裏方「呼出(よびだし)」になった17歳の少年が主人公の小説です。

角界でも力士を題材にした物語はありますが、「呼出」というのは斬新です。

しかしそれ以前に、もしかしたら、これを読んでくれている塾生の大半が「角界?」「呼出?」となっているかもしれませんね。

「角界」とは相撲の社会のことで、「呼出」とは取組前にお相撲さんの名前を呼びあげる人のことです。


 さて、この主人公も入門するまで、ほとんど相撲を見たこともなく、呼出という職業すら知りませんでした。

しかし、家を出たいという一心で、叔父に勧められるまま弱小相撲部屋に入門します。

当初は、目標もなく、俺は何をしてもダメだと思う主人公でしたが、部屋の力士たちと寝食を共にし、先輩や仲間と関わる中で、彼らの葛藤や努力に触れ、成長していきます。

 こう書くと単なる少年の成長譚のようになってしまいますが、読むと入試に出る文章の雰囲気もわかりますし、何より、前向きになれる純粋に面白い本です。

また、親子の関係についても考えさせられるところもあり、塾生だけでなく、保護者の方にも読んでいただきたい一冊です。

国語担当講師 荒柴